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甘えん坊のりり。
そんな様子をみていて
ふと思い出したのは子供の頃の私。
記憶が残るくらいの歳だから
きっと幼稚園のときくらいなんだけれど
けっこう面倒な子供だったと思う。
出掛けるときの服が気に入らず
直前になって「行かない。」といってみたり
幼稚園が嫌いで、いつも泣いていた。
泣きすぎて先生に
「あまり泣くと涙がかれてなくなってしまうよ。」
といわれた。
その証拠に子供の頃の私の写真は
泣いている写真がとにかく多い。
泣き虫で頑固もので甘えん坊だった私。
なんだー私と、りりおんなじだー
と思ったらなんだか笑えてきた。
泣きすぎると苦しくて止められなかったり
嫌嫌言い過ぎて本当は悪いと思ってるのに
ひっこみがつかなくなったり
そういう気持ちが手に取るようにわかる
そしてそんなとき母が
どんな風に接してくれて嬉しかったかも。
そんなわけで相変わらず
けんかもするけれど、りりと私は
いっそう仲良しになった。
東京の郊外に行くなんて
きっとはじめての事。
電車をいくつか乗り継いで
少し不安になりながら
窓の外の景色を眺めていた。
トンネルをぬけると
遠くに緑の山々があって
目の前には畑や木々が広がっていた。
小さな駅に降り立ち
先に来ているはずの主人に連絡するもつながらず
また少し不安になる。
紺色の大きなワゴンカーが
何度か通りすぎていたのだけれど
どうやらそれに乗っていたらしい。
やっとお互い発見し車に乗せてもらうと
くるくるパーマをかけた男性が
ひょこっと顔を出し挨拶してくれる。
「ロックミュージシャンみたいな人」
それが小谷田さんの第一印象だった。
初対面に緊張を隠せず
ドキドキしながら車は小谷田さんの家へ。
奥さんと息子のようちゃん
そして猫が1匹かおを出したり隠れたり。
テーブルを囲んで打ち合わせ。
珈琲を淹れてくれた。
もちろん小谷田さんのカップで。
その日の東京は冷たい雨が降っていて
体が冷たくなっていたけれど
珈琲とオレンジいろの光に包まれて
少し緊張も和らいだ気がした。
途中、乱入するようちゃんを見て
置いてきたりりのことを思い出して
心臓がぎゅっとなる。
ある程度打ち合わせもすんで
奥さんの作ってくれたカレーを食べる。
子どもが食べても平気な辛さ。
けどクミンシードが入っていたりして
大人にもおいしいカレーだった。
どうやって作るんだろ?
食後には紅茶とクッキー。
クッキーはきっと奥さんが作ったの。
小谷田さん家で飲んだお茶も
ごはんも本当にどれもおいしかった。
そして器が全部、小谷田さんのだった。
ようちゃんが使っているマグも。
子どもに陶器を持たせるのって
ちょっと怖いと思っていたんだけれど
ちゃんと上手に使っているのを見て
りりにも試してみようと思った。
いままでおつきあいはあったものの
お会いするのは初めてのことだったから
いろんな話をした。
お互いのことを知るには
ごはんやお茶の時間を一緒に過ごすのが
一番と思う。
ようちゃんは、なぜか主人になつき
絵本を読んでもらっていた。
わたしたちが帰るとなったら
ようちゃんがわーんと泣き出して
じたばた暴れるようちゃんを
だっこした小谷田さんに見送られながら
車で駅に送ってもらう。
そのとき、またりりのことを
思い出していた。
---
それからしばらくたって
今度は小谷田さん一家が
弘前にやってきた。
紺色の大きなワゴンカーに乗って。
小谷田さんのくるくるの髪は短くなっていて
ようちゃんは一回りくらい大きくなってた。
今度は弘前で一緒に、りりも交えて
ごはんを食べたり、お酒を飲んだりして
また少し仲良くなれたように思う。
今度はわたしたちが
りりを連れて会いにいく番。
